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農薬の安全性Q&A 1

Q1

農薬など人工化学物質は全て有害である。

Answer

この考え方は正しいのですが、これだけでは正解ではありません。科学的に正しく表現すると、「全ての化学物質は、ある量を超えると有害ではあるが、それ以下では無害である。」ということです。

ここでいう化学物質とは、農薬や食品添加物に代表される人工化学物質ばかりでなく、塩や砂糖など天然の化学物質も含まれます。最近では天然の物質からも発ガン性物質など有害なものが発見されています。

では、ある量以上は有害だからといって、全ての人工化学物質が危険かというとそうではありません。逆に、それ以下では無害・安全なのですから、安全の範囲内の量で上手に付き合うことが大切だと思います。これは天然の物質にも当てはまることです。

私たちは、各種の化学物質のおかげで快適さや安全を手に入れていることを忘れてはならないと思います。

身の回りの化学物質の急性経口毒性LD50* (単位:体重1kg又は60kg当たりmg)
化学物質 供試動物 LD50/kg LD50/60kg
テトロドトキシン(ふぐ毒) マウス 0.01 0.6
ニコチン(たばこ) ラット 50〜60 3,000〜3,600
カフェイン(コーヒー) ラット 174〜210 10,440〜12,600
食塩 ラット 3,000 180,000
砂糖 ラット 29,700 1,782,000

*)LD50とは供試した試験動物の半数が死亡する薬量のこと

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Q2

虫を殺す薬は人にも害を与えないか?

Answer

  1. 薬が作用するには一定の薬量が必要である。
  2. 作用量は虫と人とでは体重差以上の差がある。
  3. 薬剤の作用には選択性があり皆殺しではない。

薬剤が殺虫作用を示すには一定の薬量が必要です。一般的に薬剤が作用する量は対象生物の大きさに比例し、大きい生物ほど薬剤も多く必要になります。医薬品が大人と小児とでは投与量に違いがあるのと同様です。

虫の体重はミリグラム(mg)単位で、人間の体重とは1万〜10万倍以上の差がありますから、通常、殺虫作用をもたらす薬量では人に影響することはありません。

また、殺虫剤であれば、どんな虫にも効果があるわけではありません。虫の種類によって薬剤を選ばなければならないことは、農家の人は誰でも知っています。ある種の生物には作用するが、別の種には作用しないことを「選択的作用」といいます。

虫にも人にも有害な物質は、私たちの周辺にありますが、定められた使用方法のもとでは、害虫は殺すが人畜には影響の少ないもの、つまり選択的作用がある化学物質が農薬として利用されています。

ヨトウムシの発育ステージ(令期)別のA殺虫剤に対する感受性
令期 体重(mg) LD50(%)
1 0.7 0.00036 1.0
2 3.1 0.00044 1.2
3 10.4 0.0009 2.5
4 45.5 0.0010 2.8
5 310 0.0035 9.4
6 1,070 0.14 388.8

一瀬ら(1955)より

殺虫剤の選択毒性

哺乳動物(ラット)と昆虫(イエバエ)間の作用量の差が大きいほど選択性が高いこととなる。

殺虫剤名 急性毒性LD50 (mg/kg) 選択係数
A/B
ラットA イエバエB
パラチオン 3.6 0.9 4
MEP 570 2.3 238
ペルメトリン 1500 0.7 2143

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Q3

有機農業を行えば農薬は要らないのではないか。

Answer

食の安全性、健康を求める消費者が増え、有機農産物がもてはやされています。多少高額でも有機野菜を買う方も増えています。では、実際に無農薬で農作物を栽培することは可能なのでしょうか。

各地で試みがされていますが、りんご、もも等では商品価値のある収穫物は皆無、春〜秋キャベツは7割減、水稲は2〜4割減と病害虫による被害を受けてしまい、少なくとも現在の農法では農薬がなければ産業として成り立たないのが現状です。

有機農業を行っている方々は、病害虫に強い品種を選んだり、土つくりから栽培技術に至まで独自のノウハウをもち、労力もかけて栽培しています。

有機農業をしても病害虫の被害を受けないわけではありません。人の場合は健康で丈夫に育てれば免疫機能が働き病気にもかかりにくくなりますが、植物の場合は、丈夫に育っても病害虫・雑草の被害を避けることはできません。病害虫に抵抗性をもつ品種を利用したり、病害虫が発生しにくい環境をつくるなどの努力が必要です。また、ひとたび病害虫や雑草が発生したら、手で取り除くなど多大な労力がかかります。

農家の苦労を考えると有機農産物は有難いものですが、全ての農作物を有機栽培することは不可能です。また、安全性については、適正に農薬を使用したものと差はありません。

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Q4

散布された農薬は環境中に残留し続けるのでは?

Answer

かつては土や作物に残留して長い間分解しないものが使われたこともあります。例えばDDTや水銀剤は作物や環境中に長い間残留するばかりか、魚、肉、野菜などを経て、人体に蓄積することが分かりました。このままではいけないということで、これらの農薬は40年以上前に使用禁止になり、今では農薬として全く使われていません。

現在使われている農薬は、環境中や動植物体内で速やかに分解し、残留の心配のないものが農薬として登録されています。

したがって長期間分解しなかったり残留毒性のある農薬が出回ることはありません。

農薬の土壌中での残留については分解速度を調べ、半減期が180日以上のものは登録されません。

土壌中の半減期別農薬数比率(容器内試験)
  10日以内 10〜30日 30〜100日 100以上
畑状態 57% 19% 17% 7%
湛水状態 59% 27% 7% 7%

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Q5

ガンの増加は食品中の残留農薬と深い関係があるのではないか?

Answer

現在登録されている農薬は、発ガン性試験および遺伝子や染色体への影響を調べる遺伝毒性試験を行い発ガン性の疑いのないものだけが農薬として登録されています。

発ガン性をもつといわれている物質は、普通の食物にも含まれています。それでもガンにならないのは、体の中に防御機能が備わっていたり、体内に入る量がわずかであるからです。

農薬の人の体内に入る量は、食品そのものに含まれている発ガン性物質の量の1万分の1以下といわれ、はるかに少なく、発ガン性のあるものはありませんから、農薬が原因でガンになる危険性はほとんどありません。

ガン疫学者である黒木登志男氏は、「主婦の多くは食品添加物や農薬が、ガンの主な原因と考えているとの調査結果がある。これに対して疫学者たちは、食事と喫煙が主な原因で、食品添加物や農薬による発ガンはほとんど無視できる」としています。


出典:「暮らしの手帖」第25号(3世紀)1990年4・5号
ガンの原因について主婦とガンの疫学者の考え方の違い

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Q6

農薬は徐々に体内に蓄積しないか?

Answer

農薬は、動物体内に入った場合、どのような場所に取り込まれ、どのように変化したり分解したりして対外に出ていくかを詳しく調べています。

体内に入った農薬は、胃や腸で分解され、あるいは腸から吸収されたものは肝臓で分解され、最終的には大部分が尿や糞に含まれて体外に出てしまいます。 かつて残留が問題になった農薬には以下の性質が強くみられています。

  • 分解しにくく、環境中に長期間残留しやすい
  • 脂肪に溶ける性質があり、体内に吸収されると皮下脂肪に蓄えられる

現在使用されている農薬は、蓄積する性質はなく、もし体内に取り込まれても比較的早く分解され尿や便といっしょに体外へ出てしまうので、体内に蓄積されて悪い影響を及ぼす心配はありません。

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Q7

ゴルフ場での農薬使用により水源汚染が心配。

Answer

国や県では、ゴルフ場排出水の水質検査を実施して汚染の実態を調べていますが、農薬の検出は少なく、平成15年~令和元年度の調査でゴルフ場排水51万7千検体すべてが環境省の定めた水濁指針値(又はその暫定指導指針値)を超えておらず、平成29年3月に導入された水産指針値の超過も0.01%(11万9千検体中15例、年間3~6例)と僅かです。

また、以前に比べ、ゴルフ場における1ホール当たりの農薬使用量は年々減少しています。

ゴルフ場にまかれた農薬は、太陽の光で分解したり、植物体や土の中で分解するほか、土の粒子に吸着されてしまい、ゴルフ場の外へ流出することはほとんどありません。

ただし、散布直後に大雨が降ったりして一時的に表流水に混じってゴルフ場外へ流出する危険性もあるため、ゴルフ場では調整池を設けたり、農薬取扱責任者をおいて農薬の使用を厳重に管理しています。

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Q8

街路樹に農薬を散布しているが、周辺住民の健康に影響しないか?

Answer

街路樹・なかでも広葉樹には、アメリカシロヒトリ、アブラムシ、カイガラムシ類など害虫による被害が多く防除が欠かせません。被害を受けた枝部分の除去など手で取り除く方法もありますが、大切な樹木を傷めず的確に防除するには、農薬を用いるのが一般的です。散布に際しては、周辺住民に対して事前にお知らせしたり、通行人や自動車等に農薬がかからないように注意して行っています。

住宅地等での農薬使用については、國からもきめ細かな指導がなされております。具体的な方法については、環境省より住民等への農薬の飛散によるリスク軽減に向けて「公園・街路樹等病害虫・雑草管理マニュアル」がH22年5月に作成(令和2年5月に改定)され、指導されています。このマニュアルでは以下の事項について適切な指示を出すためのものとなっています。

  1. 地域住民との調整
  2. 植栽の維持管理方法の工夫
  3. 早期発見と防除に係る判断の確認
  4. 防除手段の選択(物理的防除、農薬による防除等)
  5. 被害程度や防除結果の確認と記録
  6. フィードバック(病害虫管理結果に基づく次期対策の検討)

樹木等に農薬を散布した場合の立入制限について(周囲と期間)を定めており、これらの事項を遵守することにより、健康に影響を及ぼさない取組をしています。

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Q9

ホタルが減少したのは農薬が原因ではないか。

Answer

昔に比べトンボやホタルが減ったのは事実です。しかし、この原因が農薬によるものであるとは一概にはいえません。

最も大きな原因は、トンボやホタルの生息場所が工場や市街地の開発などによってせばめられてきたことです。さらに、一般家庭から出される生活排水もこれらの虫の生息環境を破壊しています。

農薬の場合、以前に魚や貝類に毒性の強いものが使われていましたが、河川に流入する可能性の高い水田では使用禁止になっており、低魚毒性の農薬に替わっています。農村部ではホタルが復活した所もあります。

しかしながら、不適切な使用により河川、湖沼へ大量に流れ込んだりすれば影響を与えることも十分考えられます。農薬を使うときは、周辺への影響について配慮する必要があることはいうまでもありません。同時に自然を汚さないように、私たち一人一人の日常生活のなかでの心配りが最も必要ではないでしょうか。

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Q10

農薬の毒性試験項目は?

Answer

人に対する影響については以下の試験が義務付けられています。

【有効成分の評価試験】

  1. 急性経口毒性試験
  2. 急性経皮毒性試験
  3. 急性吸入毒性試験
  4. 皮膚感作性試験
  5. 90日間反復経口投与毒性試験
  6. 90日間反復吸入毒性試験
  7. 21日間反復経皮投与毒性試験
  8. 遺伝毒性試験[①復帰突然変異、②染色体異常、③小核、④遺伝子突然変異又はDNA損傷]
  9. 慢性毒性試験
  10. 発がん性試験
  11. 繁殖毒性試験
  12. 発生毒性試験
  13. 発達神経毒性試験
  14. 急性神経毒性試験
  15. 急性遅発性神経毒性試験
  16. 28日間反復投与遅発性神経毒性試験
  17. 反復経口投与神経毒性試験
  18. 解毒方法又は救命処置方法

【製剤の評価試験】

  1. 急性経口毒性試験
  2. 急性経皮毒性試験
  3. 急性吸入毒性試験
  4. 皮膚刺激性試験
  5. 眼刺激性試験
  6. 皮膚感作性試験
  7. 経皮吸収試験
  8. 圃場における農薬使用者暴露試験

毒性試験以外の内容を含めた詳細はこちら(PDF 抜粋)をご覧ください。

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